2014年4月21日月曜日

【書評】[digital] ライティング& レンダリング 第3版

 さて、モデリングの話やジェネラリストの話など、滞ってしまっていますが、今回は1冊の良書を紹介したいと思います。

ボーンデジタルより発売された「[digital] ライティング& レンダリング 第3版」です。

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[digital] ライティング& レンダリング 第3版

この本は駆け出しの頃に、一度、初版を読んだ事がるのですが、当時はCGの知識や、基本的なことを知らずに読んだために、あまり理解することが出来ませんでした。
今回の第3版の発売を気に、再び読んでみようと思い、読んでみました。
特に僕が気になったのは「リニアワークロー」「物理ベースのライティング」「4K」「Ptex」「トーンマッピング」などの加筆された項目です。

まず、この本がどういった本かというと、題名の通り、ライティング、レンダリングをフォーカスした書籍なのですが、ライティング、レンダリングに関することだけではなく、テクスチャ制作の基本的なカラーマネージメント、フィジカルベースシェーディングやリニアフロー、大規模プロダクションのワークフローやパイプラインについても触れられています。

ただ、個人的に感じたことは、非常に本書は上級者向けな書籍だと感じました。出てくる専門用語も多く、それらの専門用語に対して、細かく解説がなされている訳ではありませんので、新人アーティストや学生には少々敷居が高い書籍だと思います。
その反面、ある程度CGに精通しているシニア、現場の第一線で活躍されているフリーランス、教壇に立ち教員や講師として働いておられる、いわゆるプロの方には、非常に有益な情報が多く”プロのためのCGの教科書”という印象を持ちました。

本書の初めにも述べられていますが「本書は、ソフトウェアのマニュアル、ヘルプファイルの代わりになるものではなく、それらを補足することを目的としています。」という文面からも、上級者向けの本であるということが伺えます。

僕自身、実際に多くのことを復習できましたし、新しいことも学び得ることができました。特にリニアフローの認知度が広がりつつあるにも関わらず、リニアフローを用いずに絵作りをするアーティストが多い原因は何か?など僕自身が興味を引かれる内容が所々にあり、非常に参考になりました。

本書を読んでいて、気になったページや文章に付箋を貼りながら読んでいたら、こんな感じで、大学受験生の参考書みたいになってしまいました(^^;





それでは、ここからは僕が重要だと感じた文章を、本書の文章を引用しつつご紹介したいと思います。
※ボーンデジタル承認の上での、本ブログ内での文章引用となります。


第一章:ライティング設計の基礎 より引用

作業がうまくいかないことをツールのせいにするのは、優秀なアーティストのすることではありません。中略、、、レンダリングソフトの不具合、欠点、制限などを補う必要があります。


これはライティングだけに言えることではありません。モデリングやテクスチャなどでも同様です。上手くできないのは、自分自身の知識、技術不足に起因することが大です。僕の経験では、優秀なアーティストはツールに関わらず、同じようなことを表現する術を心得ている人が多いです。


第2章:ライティングの基礎とさまざまな手法

必ず全てのライトに明確な名前を付けるようにしましょう。中略、、、ほとんどのスタジオがプロジェクトごとに厳格な命名規則を定めています。どの規則に従うかということよりも、必ず全員が同じ規則に従い、一貫して各ライトに認識しやすい名前を作成することが重要です。


案外軽視されがちな命名規則ですが、これらの命名規則はディレクトリ構造、モデリング、テクスチャー、リギング、レンダリングのパス出力、コンポに至るまで存在します。
インハウスツールやワークフロー、パイプライン(パブリッシュシステム)などは、これらの命名規則を元に作られることが多く、命名規則を無視したプロダクションワークは、ワークフローに混乱を招くだけでなく、作業遅れの原因になることもあります。


第8章:色の基本

リニアフローとは、テクスチャの準備、サーフェースカラーの選択、ライティング、レンダリング、合成といったプロセス全体に対するカラーマネージメントの方法を指します。中略、、、リニアフローを理解すれば、ライティングや合成における時代遅れな次善策に頼る必要はなくなります。

ガンマを理解する
近年、リニアフローの認知度は広まりつつありますが、いまだに多くの人がリニアフローを用いずに、グラフィックを作成しています。では、その原因を作っているのは何でしょう?その一つは「目」です。


グローバルイルミネーションは物理的に正確な逆2乗の光の分布を使用するため中略、、、リニアフローを用いないと正確に機能しません。

HDRI(リニア)を用いたIBLとGIを組み合わせてリニアな環境に設定したにもかかわらず、リニアな状態でないテクスチャーやシェーダーを用いて、誤った扱いをしている人も大勢いると思います。そして最終的にはレンダリングイメージを”見た目”で修正するということは大いにある話です。GIを正確に用いるためには、リニアフローへの知識は必要不可欠だと、本書を読んでいて感じました。


第10章:テクスチャのデザインと割り当て

リアルなレンダリングオブジェクトではオブジェクトのカラーに純粋な白や黒、あるいは彩度が100%の赤、緑、青を使用するのは避けたほうが良いです。中略、、、これららは現実世界では存在しません。

中略、、、ほとんどの場合、テクスチャマップの赤、緑、青のカラー値は15%から85%にしておくのが良いです。

これは僕がリニアフロー、フィジカルベースで物を考えている時に、常に心がけていることで、本書を読むことで、ぼくの方法論、理論が間違っていなかった裏付けが取れました。


ここで紹介した物は、本書のほんのごく一部です。私自身、他にも重要だと思った文面は幾つもありました。もちろん、何が重要で重要でないかを判断するには、個人差があるともいますが、少なくても僕が読んだ限りでは、本書はプロのための良書であり、プロのための教科書になると感じました。

単価が7000円と高く、個人で買うのは難しいかもしれません。また前回紹介した「大聖堂を建てよう」と同様に、常に必要という訳ではなく、必要なときに読み返し、必要な情報のみを復習、実践し、基礎を実践で覚えていく類の参考書、教科書に近いです。
しかしながら、本書から得られる情報は非常に重要なものが多く、読みたい時にすぐ読む必要がある場合を考えると、手元に置いておきたい1冊であるとことは間違いありません。

またスタジオや教育機関でも非常に重宝される一冊だと思いますので、興味を持たれた方は、スタジオや教育機関を通して、購入を検討されては如何でしょうか?もちろん、個人で購入、所持できるのが一番だと思いますが。





また、手前味噌ではありますが、来月発売のCG WORLD6月号にてSubstance Painterのレビューを4ページほど書かせて頂きましたので、そちらも合わせてご覧ください。

今回はかなりの長文となってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

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